はじめに
令和7年3月31日に公布された「所得税法等の一部を改正する法律」により、「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」が改正され、「防衛特別法人税」が創設されました。今回はこの制度についてご紹介いたします。
1.制度の概要
令和4年に決定された国家防衛戦略に従い、防衛力整備計画が策定されました。この計画実施にあたり、2023年度から2027年度の期間において約43兆円の資金が必要となるため「防衛特別法人税」が創設されました。
この制度は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用され、各事業年度の所得に対して法人税が課されます。また納税義務者は法人となります。
防衛特別法人税額は、以下の式で計算されます。
(基準法人税額 – 基礎控除額500万円) × 4%
基準法人税額: 所得税額控除や外国税額控除など、特定の税額控除を適用しないで計算した法人税の額を指します。
基礎控除額: 年間500万円と定められています。なお、事業年度が1年に満たない場合は、月数に応じて按分されます。
2.申告と納付
防衛特別法人税の確定申告書は、原則として各課税事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、納税地を所轄する税務署長に提出しなければなりません。
所得が欠損金となる場合や、基礎控除額500万円の控除により課税標準法人税額が0円となる場合でも、確定申告書の提出が必要です。ただし、公益法人等で収益事業を行っていない法人など、元々法人税の納税義務がない法人は申告の必要はありません。
申告書の様式は、法人税及び地方法人税の申告書と一体化されます 。具体的には、従来の「別表一」の次に新たに「別表一次葉一」が追加され、そこに防衛特別法人税の計算欄が設けられます。
また、令和9年4月1日以後に開始する課税事業年度からは、法人税の中間申告書を提出すべき法人は、防衛特別法人税についても中間申告書の提出が必要です。ただし、公益法人等で収益事業を行っていない法人など、元々法人税の納税義務がない法人は申告の必要はありません。
3.外国税控除
法人税や地方法人税で外国税額控除を適用しても控除しきれない金額がある場合、防衛特別法人税でも外国税額控除の適用を受けることができます。また、外国税額控除のほか、分配時調整外国税相当額の控除や仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う防衛特別法人税額の控除などの税額控除規定も設けられています。
これらの税額控除は、特定の順序(分配時調整外国税相当額、控除対象所得税額等相当額、仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う防衛特別法人税額、外国税額控除)で行うことと定められています。
おわりに
今回は、防衛特別法人税の概要をご紹介いたしました。法人税以外にも所得税やたばこ税も対象となり、段階的に実施されることとなりました。
(担当:中村)