はじめに
税務署による税務調査には、法律に基づく厳格な手続があります。国税庁の定める「基本的な事務手続及び留意事項」をもとに、実地調査等に関するポイントを解説します。
1.「調査」と「行政指導」は明確に区分される
税務署職員が事業者や個人納税者に接触する場面、その行為が「調査」もしくは「行政指導」のいずれかを明示することが求められています。
「調査」とは、法律に基づいて税額を確定する目的で行われるもので、証拠収集や帳簿確認が含まれます。
一方、単なる助言や指導などは「行政指導」にあたります。
2.原則として事前に調査通知が行われる
実地調査を行う場合、税務署は、納税者とその税務代理人の双方に、以下の事項を電話または書面などで通知します。
・調査の目的
・対象となる税目(例:法人税、消費税など)
・調査対象期間
・調査開始日時と場所
・対象帳簿・資料の種類
・調査担当者の氏名と所属機関
3.例外的に「無予告調査」が行われることも
納税者の申告内容や取引の性質から、事前通知を行うと不正行為を容易にし、正確な調査が困難になるおそれがあると判断された場合には、事前通知なしで調査が行われることがあります。
4.調査当日の基本的な流れ
調査当日は、税務署職員が身分証明書を提示し、調査が始まります。納税者や代理人の協力を得て、帳簿・資料を確認し、質問や検査が行われます。
なお、調査中に当初の通知事項以外に疑わしい点が見つかった場合には、その旨を納税者に説明し、新たな項目を追加して調査を継続することもあります。帳簿や書類の提示を求める場合は、納税者の承諾のもとで行われ、やむを得ない場合には一時的に書類を預かることがあります。この際は「預り証」が発行され、適切に管理されます。
5.調査終了時の手続き
調査終了時の手続きは、次のいずれかとなります。
〇更正決定等をしない旨の通知
申告内容に問題がない場合は、対象税目や期間について「更正決定をすべきと認められない旨」の通知が書面で渡されます。
〇更正等を行う場合の説明と修正申告の勧奨
申告に誤りがあると認められた場合は、その内容(対象税目・期間・金額・理由)について、口頭で説明が行われます。その上で、納税者に「修正申告」または「期限後申告」が勧奨されます。このとき、修正申告を提出した場合は不服申立てができないこと(ただし更正の請求は可)等、法的効果の説明が行われ、「教示文」が交付されます。
6.調査の再開や追加調査の可能性
一度調査結果が伝えられた後に、納税者から新たな証拠や情報が出された場合は、調査が再開される可能性があります。
7.税務代理人対応と通知の取り扱い
税務代理人がいる場合、納税者本人の同意があれば、代理人を通じて通知や説明が行われることがあります。これにより手続きの円滑化が図られますが、事前に適切な権限証書の提出が必要です。
8.処分に理由を明記する「理由附記」
税務署による申請拒否や納税者に不利益な処分を行う場合は、その理由の提示「理由附記」が行われます。
おわりに
国税調査は、あらかじめ定められた法律と通達に基づき、適正かつ丁寧に進められます。納税者としては、調査の手続や通知内容を理解し、冷静に対応することが重要となります。
出典:国税庁 調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/sonota/120912/index.htm
(担当:善本)