はじめに
本稿では、令和8年度税制改正大綱(令和7年12月26日閣議決定)に盛り込まれた「所得控除の拡充・整理」に関する主な改正点を、実務で押さえたいポイントに絞って整理します。
子育て世帯やひとり親家庭への支援、国民の自主的な健康管理(セルフケア)の促進等を背景に、期限延長・控除額の引き上げ・制度整理が予定されています。
1.セルフメディケーション税制 (適用期限延長・対象範囲の見直し)
セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)について、制度の使いやすさを高める観点から、適用期限と対象医薬品の範囲が見直されます。
(1)適用期限
1.スイッチOTC医薬品の購入分
適用期限を撤廃し、恒久措置となります。
2.スイッチOTC医薬品以外の一般用医薬品等
適用期限が5年延長されます。
(2)対象医薬品の範囲(例示)
1.追加
消化器官用薬、特定の生薬成分を含む鎮咳去痰薬(かぜ薬等)、OTC検査薬、薬局製造販売医薬品等
2.除外
痩身又は美容目的等で使用される可能性のある医薬品等
適用開始時期は、令和9年分の所得税からとなります。
2.子育て世帯の一般生命保険料控除の特例(適用期限の延長)
23歳未満の扶養親族を有する居住者について、一般生命保険料控除(新契約)の限度額を引き上げる特例(上限:4万円→6万円)は、当初令和8年分のみの時限措置でしたが、適用期限が1年延長されます。
適用期限は、令和9年分までとなります。
3.ひとり親控除の拡充(控除額の引き上げ・所得要件の緩和)
ひとり親家庭の子育てに係る経済的負担の軽減を目的として、所得税・個人住民税の控除額が引き上げられるとともに、所得要件も緩和されます。
|
区分 |
改正前 |
改正後 |
|
所得税の控除額 |
35万円 |
38万円 |
|
個人住民税の控除額 |
30万円 |
33万円 |
また、基礎控除の見直しに合わせ、控除を受けるための所得要件は現行の58万円以下から62万円以下に緩和されます。
適用開始時期について、控除額の引き上げは、所得税は令和9年分、個人住民税は令和10年度分から、要件の緩和は、所得税は令和8年分、個人住民税は令和9年度分からとなります。
4.ベビーシッター等の利用に要する費用に係る税制上の措置
育児や子どもの不登校等を理由とした離職を防ぐ観点から、ベビーシッター等の利用支援について、税制措置も含めた総合的な支援策が検討されています。
官民連携による普及広報や実態調査等を行い、利用拡大に向けた支援策等を検討した上で、必要な場合には適用対象の範囲等の要件を適切に設定し、税制上の措置を講ずるとされています。
検討は来年夏頃を目途とされています。
5.高校生年代の扶養控除縮小の見送り
児童手当の高校生年代までの延長に伴い議論されていた、16歳から18歳の高校生年代の扶養控除の縮小については、当面の間見送られ、現行制度を維持する方針が示されています。
そのため、令和9年分の所得税および令和10年度分の個人住民税においても、これまでと同様の扶養控除が適用されます。
今後は、児童手当の拡充や高校無償化に係る歳出面の対応等も踏まえつつ、引き続き検討される予定です。
おわりに
内容は大綱段階のため、今後の法案審議・通達等により変更となる可能性がある点に注意が必要です。
(担当:園田)