はじめに
令和8年度の税制改正では、税負担の公平性の確保を目的として、超富裕層に対する課税強化や、ふるさと納税制度の見直しが行われます。超富裕層を対象にした主な改正点について解説します。
1.ミニマムタックス課税の見直し
我が国の所得税は累進税率を採用しており、所得が増加するにつれ、最大で45%の税率(住民税を合わせると最大55%。復興特別所得税を含まず。)が適用されます。しかし、所得が極めて高い層においては、所得に占める割合のうち、低税率で分離課税が適用される金融所得などの割合が高くなることで、逆に税負担率が低下する現象、いわゆる「1億円の壁」が課題とされていました。
令和5年度の税制改正にて導入され、令和7年から施行されている、極めて高い水準の所得に対する課税強化(いわゆるミニマムタックス課税)ですが、今回の税制改正では、さらなる財政の再分配機能を高め、税負担の垂直的公平性を確保することを目的として、以下の改正が実施されます。
なお、以降の解説で使用する金額や税率には、特段の言及がない限り、復興特別所得税を含んでいませんのでご留意ください。
(1)対象基準の引下げに伴う適用範囲の拡大
追加の税負担を計算する際、基準所得金額(給与所得、事業所得、株式等の譲渡所得、不動産の譲渡所得、その他の各種所得を合算した金額)から差し引くことができる特別控除額が、以下の通り引き下げられます。これにより、これまで対象外だった所得層も新たに課税強化の対象となります。
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現行 |
3.3億円 |
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改正後 |
1.65億円 |
(2) 税率の引上げに伴う追加の税負担の増加
追加の税負担を算出する際に用いる税率についても、以下の通り引き上げられます。
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現行 |
22.5%(住民税を含めると27.5%) |
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改正後 |
30%(住民税を含めると35%) |
税制改正の内容をふまえた、追加の税負担を算出するための計算式は以下となります。下記の計算式の計算結果がプラスだった場合にはその計算結果が追加の納税額となります。ここで、基準所得金額は寄附金控除等の所得控除前の合計所得金額を基準とすることに留意が必要です。
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(計算式) (基準所得金額-1.65億円)×30% – 基準所得税額 |
なお、その年の所得が株式や不動産の譲渡所得、上場株式の配当所得のみの場合で、追加納税額が発生する分岐点となる所得金額は以下の通りです。
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現行 |
9.9億円(復興税を考慮すると10.33億円) |
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改正後 |
3.3億円(復興税を考慮すると3.37億円) |
2.ふるさと納税の健全な運用に向けた見直し
2008年に開始したふるさと納税制度ですが、寄附受入額が年間1.2兆円を超える規模にまで成長しました。今日までに様々な改正が行われた当制度ですが、先述の超富裕層に対する課税の強化に関連して、高所得者による過度な節税利用を抑制するために、これまで所得に応じて上限なく増えていた特例控除額について、給与所得1億円相当が目安となる定額の上限が設けられることになりました。
具体的には、個人住民税所得割の2割と、以下の金額のいずれか低い方が上限額として設定されます。
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道府県民税:77万2千円(指定都市は38万6千円) |
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市町村民税:115万8千円(指定都市は154万4千円) |
おわりに
今回の税制改正は、税負担の公平性を高め、所得の再分配機能を強化することを目的としています。極めて高い所得を得ている層に対しては適正な税負担が求められる一方、ふるさと納税制度についても本来の趣旨を踏まえた健全な運用が図られています。
なお、ミニマムタックス課税の適用を受ける方は、ふるさと納税等の寄附金控除による税額軽減効果を十分に得られない可能性がある点にもご留意ください。
(担当:円谷)