会計・税務の知識

2026年02月05日 発行(税制改正特集) 相続税等における不動産(貸付用不動産、不動産小口化商品)評価の適正化

はじめに

 

 

 近年、不動産の時価と相続税評価の乖離を利用した対策が広く行われ、課税庁は財産評価基本通達6項に基づく課税処分を行うことなど個別に対応してきました。しかし、このような対応について、納税者の予見可能性といった観点からの批判があり、評価方法の明確化が要請されていました。

 そのため、納税者の予測可能性を確保しつつ、評価の適正化及び課税の公平性を図る観点から、令和8年度税制改正大綱(令和7年12月26日閣議決定)に「貸付用不動産」「不動産小口化商品」の評価方法の見直しが行われることとなりました。主な改正点を、実務で押さえたいポイントに絞って整理します。

 

 

 

 

1.改正の概要

 

 

 従来、相続対策として貸付用不動産や不動産小口化商品の購入が行われてきましたが、これらについて見直しが行われます。

 以下貸付用不動産と不動産小口化商品それぞれにつき、解説します。

 

(1)貸付用不動産の財産評価方法の見直し

 相続税法の時価評価主義の下、貸付用不動産の市場価格と相続税評価額との乖離実態を踏まえ、その取引実態を考慮し見直しを行うこととなりました。

 具体的には、被相続人が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における「通常の取引価額」によって評価することとなります。

 ただし、課税上の弊害がない場合には、「取得価額×取得から課税時期までの地価変動割合等×80%」に相当する金額による評価を可能としております。

 なお、上記の改正を通達に定める日の5年前から所有している土地の上にある「新築家屋(改正を通達に定める日において建築中のものを含む。)」には、従来の評価が適用されます。

 

(2)不動産小口化商品の財産評価方法の見直し

 不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち、一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産(いわゆる「不動産小口化商品」)については、その取得の時期にかかわらず、課税時期における「通常の取引価額」に相当する金額によって評価することとなります。

 ただし、課税上の弊害がない限り、出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等、事業者等が把握している適正な売買実例価額又は定期報告書等に記載された不動産の価格等を参酌して求めた金額による評価も可能としております。

 なお、評価金額がこれらに該当しないと認められる場合には、貸付用不動産の評価方法に準じて評価することとなりますが、この場合は取得時期や評価の安全性を十分考慮して慎重に判断する必要があります。

 

 

 

2.適用時期

 

 貸付用不動産及び不動産小口化商品の改正は、令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用します。

 

 

 

3.法人が保有する貸付用不動産、不動産小口化商品の評価について

 

 法人が保有する資産は財産評価基本通達で評価されることとなるため、法人が所有する貸付用不動産、不動産小口化商品についても改正後の評価方法が採用されるかが注目されます。

 

 

 

4.令和8年度中の贈与について

 

 

 上記のとおり、改正が令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価より適用されるため、令和8年度中の贈与が多発すると想定されます。

 この場合現行の通達評価の適用が可能となりますが、原則的な方法により評価することが著しく不適当と認められる場合(例えば、購入後直ちに贈与したり、贈与を受けた直後に売却する等)には、国税庁長官の指示を受けて評価が見直される(財産評価基本通達総則6項)リスクがありますので、贈与実施前には事前に専門家に相談することを推奨いたします。

 

 

 

 

おわりに

 

 

 内容は大綱段階のため、今後の法案審議・通達等により変更となる可能性がある点に注意が必要です。

 なお本改正については、改正通達の発遣前の令和8年の秋頃にパブリックコメントが提出されると予想されます。

(担当:高橋)

 

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