会計・税務の知識

2020年12月03日 発行資本性借入金について

はじめに

 

新型コロナウイルス感染拡大により業績悪化を余儀なくされた中小企業は、日本政策金融公庫の特別貸付や

民間金融機関のセーフティネット保証付き融資により資金繰りを凌いできました。

 

しかしながら、新型コロナウイルスの第三波が到来する中で、コロナ対応借入の返済が開始することを考えると、

より抜本的な資金調達対策が迫られるところです。

 

そこで、本稿では、金融庁が、金融機関に対して積極的な活用を要請している「資本性借入金」について解説いたします。

 

 

1.資本性借入金とは

 

資本性借入金とは、貸出条件が資本に準じた十分な資本的性質が認められる借入金のことであり、

金融機関が中小企業を評価する際に「資本」とみなして取り扱うことが可能なものです。

具体的には次の条件を備えた借入金となります。

なお、( )内は日本政策金融公庫(中小企業事業)の新型コロナ対策資本性劣後ローンの事例です。

 

(1)償還条件

    契約時における償還期間が5年を超え、期限一括償還又は長期の据置期間が設定されていること

       (期間が5年1か月、10年、20年のいずれかで期限一括償還)

 

(2)金利設定

    資本に準じて、配当可能利益に応じた金利設定、例えば、業績連動型など、中小企業が厳しい状況にある期間は、

    これに応じて金利負担が抑えられるような仕組みが講じられていること

       (融資後3年間は0.5%、その後、黒字の場合2.95%、赤字の場合0.5%等)

 

(3)劣後性

    法的破綻時の劣後性が確保されていること、又は、少なくとも法的破綻に至るまでの間において、

    他の債権に先んじて回収されない仕組みが備わっていること

    (法的倒産手続きの開始決定が裁判所によってなされた場合、すべての債務に劣後します)

 

 

2.資本性借入金のメリット

 

(1)資金繰りの改善

    長期の期限一括償還が基本であり、資金繰りが改善します。

    また、業績が悪い(赤字の)時期は金利が低くなります。

 

(2)効果

    資本性借入金を資本とみなすことで財務内容が改善され、新規融資が受けやすくなります。

 

 

                         

                                                                                出所:金融庁HP

 

3.資本性借入金の代表例

 

(1)【日本政策金融公庫】新型コロナウイルス感染

      症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)

 

(2)【商工中金】劣後性ローン

 

(3) 中小企業再生支援協議会版「資本的借入金」

 

 

おわりに

 

中小企業にとっては有利な条件の借入であっても、裏を返せば金融機関にとっては、厳しい判断を要する案件となります。

中小企業の経営者にとっては、再生が可能と見込まれるような事業計画の策定とそのアクションプランを実行する

覚悟が求められます。

 

因みに、みずほ銀行の藤原頭取が、ダイヤモンドのインタビューで「資本性借入の投入でメインバンクの矜持を示す。」

と、銀行としての覚悟を語っていたのが印象的でした。

 

(担当:竹内)

 

 

 

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