会計・税務の知識

2021年06月10日 発行特定期間による消費税の納税義務

はじめに

 

消費税の納税義務については基準期間における課税売上高が1,000万円以下であれば、原則免税事業者となります。しかし、一定の場合に該当すると、課税事業者となる場合があります。その中の一つである特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例についてご紹介いたします。

 

 

1.特定期間とは

 

特定期間とは下記期間その他一定の期間になります。

 

①個人の場合

その年の前年の1月1日から6月30日までの期間。

 

②法人の場合

その事業年度の前事業年度開始の日以後6月の期間。

※短期事業年度(下記2参照)の場合にはその事業年度の前々事業年度開始の日以後6月の期間

(前々事業年度が6月以下の場合には前々事業年度開始の日から終了の日までの期間)。

なお、前々事業年度が基準期間に含まれる場合等は前々事業年度から除かれます。

 

 

2.短期事業年度

 

短期事業年度とは次のものになります。

 

①その事業年度の前事業年度が7月以下であるもの。

 

②その事業年度の前事業年度(7月以下であるものを除く)で、前事業年度開始の日以後6月の期間の末日の翌日

 

(一定の場合にはそれぞれ定める日)からその前事業年度終了の日までの期間が2月未満であるもの。

 

 

3.要件

 

下記要件に該当した場合に課税事業者となります。

 

①特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合。

 

②特定期間に支払った給与等の金額が1,000万円を超える場合。

 

なお、上記①、②のどちらかにより判定することができるので、両方に該当しなければ免税事業者として判定することができます。

 

また、特定期間が6ヵ月以下であっても6ヵ月分に換算の必要はありません。

 

 

4. 特定期間に支払った給与等の金額の範囲

 

特定期間に支払った給与等の金額の範囲は、給与、賞与等、使用人に対して無償又は低額の賃貸料で社宅、寮等を貸与することなどにより供与した経済的利益の額で給与所得とされたもの等が該当します。

 

また、未払額や退職手当等は含まれませんので注意が必要です。

 

 

5. さまざまなケースの注意点

 

①新設法人2期目

設立期2期目については基本的に資本金の額又は出資金の額が1,000万円以上でなければ免税事業者となりますが、

設立期に売上が多く、役員報酬等が多い場合には特定期間の要件により課税事業者となる場合があります。

その場合、事前に設立期を7月以下にし、短期事業年度にしたり、特定期間中に支払われる

役員報酬等を1,000万円以下にする等して免税事業者の期間を増やすことができます。

 

②法人成り

法人成りの場合、個人事業者だった期間の課税売上高は判定に関係ありませんので注意が必要です。

 

 

おわりに

 

現在消費税の納税義務についてはとても複雑になっております。

特に特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例については、設立して間もない法人が免税事業者となりたい場合には事前に見込まれる売上や給与等について、検討が必要となる場合がありますのでご留意ください。

 

                                                                                                                                                               (担当:杉山)

            

 

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