会計・税務の知識

2021年08月19日 発行自筆証書遺言保管制度

はじめに

 

2020年7月10日より自筆証書遺言保管制度が開始されました。従来、自筆証書遺言は公正証書遺言と違い、自宅等で保管する必要があり、紛失や改ざん及び発見されないリスクがありましたが、本制度では自筆証書遺言を法務局に預けられるようになりました。今回はこの制度についてご紹介します。

 

 

 

1.自筆証書遺言保管制度の概要

 

(1)保管までの流れ

本制度では、通常通り作成した自筆証書遺言を法務局に預けるものになります。保管までの流れとしては、まず、民法の要件に沿った遺言書を本人が作成します。その後、保管所を決め、保管申請書を作成します。遺言書、保管申請書、住民票写し、運転免許等の身分証を持参の上、保管所に来庁し,保管の申請を行います。手続が終了すると保管証を受領し完了となります。なお、保管所は下記のいずれかを管轄する法務局となります。

・遺言者の住所地

・遺言者の本籍地

・遺言者が所有する不動産の所在地

また、原則、事前の予約が必要となります。

 

(2)相続開始前の閲覧

相続開始前において保管した遺言書を閲覧することができます。閲覧方法は、モニター画面での閲覧又は原本閲覧であり、原本の閲覧は原本を保管している保管所でしかできませんが,モニター画面による閲覧は全国どこの保管所でも手続できます。但し、閲覧ができるのは遺言者本人のみになります。

 

(3)変更届出

遺言者自身の氏名、住所等の変更及び遺言書に記載した受遺者・遺言執行者等の氏名、住所等の変更が生じた場合には、保管所に変更の届出を行う必要があります。

 

(4)遺言書保管の撤回、見直し

預けている遺言書の保管をとりやめたい場合には、保管申請の撤回を行い、返還を受けることができます。また、遺言書の内容を変更した場合には、一度撤回・返還の上、内容を変更して再度保管の申請を行うことができます。なお,保管申請の撤回は遺言の効力には影響しません。但し、撤回に際して手数料はかかりませんが、再度申請する際には手数料が発生します。また、撤回できるのは遺言者本人のみとなります。

 

(5)相続開始後の閲覧、証明書の交付

相続開始後においては、相続人、受遺者・遺言執行者等(以下「相続人等」)が遺言書の閲覧(モニター画面又は原本)及び、遺言書保管事実証明書、遺言書の内容を確認できる遺言書情報証明書の交付を受けることができます。

 

 

2.メリット

 

保管制度の主なメリットは下記になります。

・法務局で保管されることで改ざんや紛失のリスクを回避できます。

・公正証書遺言と同じく検認が不要になります。

・公正証書遺言と比べ、保管手数料は申請時にかかる3,900円のみと安価です。公正証書遺言とは違い、財産価額に関係なく一律の金額になります。

・「死亡時通知」及び、相続人等の一人が遺言書の閲覧、証明書交付を受けたときに全ての相続人等に通知される「関係遺言書保管通知」の通知制度が設けられています。これらにより遺言書の存在が知られることなく相続手続きが行われてしまう事態を回避することができます。

 

 

 

3.留意点

 

・遺言書の内容はチェックされません。保管所では、遺言書の形式要件の確認はあるものの、遺言書の内容確認はありません。そのため、保管したとしても遺留分侵害等の揉め事が起きる場合があります。

・遺言者本人が法務局に来庁して手続を行う必要があります。ご家族等の付き添いはできますが、代理での手続はできません。

・保管制度独自の様式の決まりがあります。決まりはA4サイズ、余白の長さ、片面記載のみ、ページ番号を記載する、ホチキス留めしないこととなります。

 

 

 

おわりに

 

保管制度は公正証書遺言より作成費用が安く利便性のある制度ですが、自筆証書遺言の内容や正確性、遺言者の遺言能力を担保するものではありませんので、保管制度をお考えの方は一度専門家にご相談されることをお勧めします。          

 

(担当:髙松)

 

            

 

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