会計・税務の知識

2021年09月24日 発行中期経営計画の作り方⑥

はじめに

 

中期経営計画の作り方シリーズ①・②では、中期経営計画の概要について、③・④は全体の手順や考え方を掴んで頂きました。シリーズ⑤では、経営理念の作り方、という内容でお送りしましたが、1枚で語り切れないテーマですから、本号に続けさせて頂きます。

 

 

1.日本企業に多くみられる経営理念

 

経営理念は、日本の企業に多く見られる特徴であり、経営理念を専門的に取り扱っている学会などがあるのも、日本のみだそうです。

もちろん、日本企業のみではなく、海外では、クレド(Credo)という表現で、ジョンソンエンドジョンソンやリッツカールトンといった企業が有名であり、優れた経営理念を作り、運用しています。

また、日本には「生きがい」という表現があります。この「生きがい」は、日本での独特の表現であると、神谷美恵子氏は著書「生きがいについて」で語っています。

 

 

2.「生きがい」と経営理念

 

日本人は、生きる上で、「生きがい」を大事にします。「やりがい」という表現でも良いかもしれません。「何のために生きるのか?」といった生きる意味付けをする傾向があります。

つまり、企業も同じで、何のために存在するのか?といった存在意義を求める傾向にあります。

 

経営理念を備えるのも、単に利益追求をする営利団体という性質だけでなく、そこに存在意義を見出すことで、組織への愛着心を醸成させ、結果的に、前回掲載した「五方」が良い状態を生むと考えることができます。

このことから、日本の企業は海外企業に比べて収益性が低いといわれるのも、利益を追求するだけでなく、社会的な存在意義を大切にする風土があるためだと考えられます。

 

 

3.経営理念/経営ビジョン/行動指針

 

経営理念を策定するに際して、経営ビジョン、行動指針をワンセットと考えると良いです。定義については細かく気にする必要ありませんが、

①経営理念:経営に対する想い

②経営ビジョン:会社の目指す方向性

③行動指針:経営理念や経営ビジョンを実現するために少しかみ砕いた行動基準

といった三段階で考えると良いでしょう。

 

経営ビジョンというのは、自社の事業領域を定義づけたり、将来像を表現したりといった内容が多いですが、中には、事業領域は経営理念に内包されているようなケースもあります。法律に則るような厳格性はないので、それぞれの会社でルールを決めて、誰にでもわかりやすければそれでよいと思います。

経営理念をできるだけ抽象化して、経営ビジョンや行動指針にすみわけをするのも良いですね。

自由であるとしつつもあまりお勧めできない型としては、整合が取れていなかったり、全部がやたらと長いのは、相手に想いが伝わりませんので、避けた方が良いでしょう。

 

 

4.経営理念は変えても変えなくても良い

 

経営理念は、一度決めたら企業が存続する限り使い続ける、という考えにも出会いますが、私は制限をしなくても良いと考えています。

日本企業の場合は、古くは1千年以上前から存在します。今から1千年後に、自社が存在すると想像した場合に、今の経営理念が受け入れられるでしょうか?場合によっては、言語自体が大きく変わっていて、現在の言語が全く読めなくなっている可能性もあります。

言葉の使い方が変われば、それに合わせて表現を変えるのが自然だと考えます。100年後や1千年後にも通用するような表現を考えるのは難しいですから、今この時に適した表現をするのが良いでしょう。

 

最近においては、創業当初の経営理念が、表現が難しすぎてよくわからない、というので、経営理念の見直しをする長寿企業も増えています。

 

 

 

おわりに

 

若干語り切れない要素もあり、次号では、社内外への理念浸透に有用である、ミッション・ビジョン・バリューについてご案内します。

           

(担当:横瀬)

 

            

 

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