会計・税務の知識

2023年07月20日 発行国外転出時課税について

はじめに

 

国外転出時課税制度は、一定の居住者(対象者)が一定金額以上の有価証券等の対象資産を所有している場合に、対象者が国外転出をする時や対象者が国外に居住する親族等に対象資産を贈与する時に対象資産の譲渡等があったものとみなして、対象資産の含み益に対して所得税が課税される制度です。

今回は対象者が国外転出する際の制度について概要を記載いたします。

 

 

 

1.国外転出時課税制度の概要

 

国外転出をする居住者で、国外転出の時に所有等している対象資産の価額(時価)の合計額が1億円以上であり、かつ、国外転出の日前 10 年以内において、国内在住期間が5年を超えている等の場合には国外転出時課税の対象となります。

国外転出時課税の対象資産は有価証券等です。

 

国外転出時課税の対象となる方は、所有等している対象資産の譲渡等があったものとみなして所得の金額を計算し、確定申告書を提出するほか、所得税を納付する必要があります。

納税管理人の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないこととなる場合には、対象資産を国外転出の予定日から起算して3か月前の日の額により評価し、その年の1月1日から国外転出の時までにおける各種取得について、通常の確定申告手続ではなく、その出国の時までに準確定申告及び納税をすることとされています。

 

一方、国外転出の時までに納税管理人の届出をする場合、対象資産は国外転出の時の価額により評価し、原則として、国外転出をした日の属する年の翌年2月 16日から3月15日までに、その年の各種所得に国外転出時課税の適用による所得を含めて確定申告及び納税をする必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.国外転出時課税の納税猶予の特例

 

(1) 国外転出時課税の納税猶予

 

国外転出時課税の申告をする方が、国外転出の時までに所轄税務署へ納税管理人の届出をするなどの一定の手続を行った場合には、国外転出時課税の納税猶予の特例の適用を受けることができます。

この特例の適用を受けた場合には、その国外転出の日の属する年分の所得税額のうち、適用資産に係る納税猶予分の所得税額については、その国外転出の日から5年4か月を経過する日までその納税が猶予されます。

また、長期海外滞在が必要な場合は、5年を経過する日までに「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例等に係る納税猶予の期限延長届出書」を所轄税務署へ提出することにより、納税猶予の期限を合計 10 年 4か月とすることができます。

 

 

(2)納税猶予の対象資産を譲渡した場合の二重課税の調整等

 

納税猶予期間中に国外転出時課税の対象となった有価証券等を譲渡した場合には、納税猶予分の所得税 額のうちその譲渡をした有価証券等に対応する部分の金額に相当する所得税について、納税猶予の期限が確定するためその譲渡の日から4か月以内に、その相当する所得税を利子税と併せて納付する必要があります。

国外転出先で納税猶予の対象となっている有価証券等を譲渡し、譲渡益が生じる場合には、外国所得税を納付する必要があります。

この場合、二重課税については原則として国外転出先で調整します。

具体的には譲渡される株式の取得価額について、含み益課税された部分をステップアップします。

ただし、国外転出先の国が国外転出時課税による課税に伴う二重課税を調整しない国であるときは、日本で外国税額控除を適用することで、国外転出時課税により課された所得税と国外転出先の国で課された外国所得税の二重課税を調整することができます。

 

 

 

おわりに

 

資産管理会社の株式を保有しているご家族が1年以上海外滞在する場合、国外転出時課税の対象となることがありますので、留意が必要です。

(担当:近野)

 

 

 

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