会計・税務の知識

2018年10月25日 発行従業員退職金の源泉徴収事務

はじめに

従業員に退職金を支払う場合には、退職金額や勤続年数に応じて所得税が生じることがあります。今回は従業員の退職金について基本的な取り扱いをご紹介します。

 

1.退職所得の金額及び所得税額

退職所得の課税標準、所得税の計算は次の算式によります。

①課税標準

(退職手当等の収入金額-退職所得控除額)×1/2

②所得税

①×超過累進税率

③住民税

①×10%

 

2.退職所得控除額

勤続年数 退職所得控除額
20年以下の場合 40万円×勤続年数   (最低80万円)
20年超の場合 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

(注1)勤続年数に1年未満の期間があるときは切り上げて勤続年数を計算します。

(注2)障害者となったことに起因して退職する場合には控除額に100万円を加算します。

 

3.源泉徴収事務

①「退職所得の受給に関する申告書」

退職手当等の受給者は、その支払時までに「退職所得の受給に関する申告書」を退職手当等の支払者を経由して所轄税務署長に提出する必要があります。(実際は税務署長から提出を求められるまでの間、支払者が保存します。)

この申告書の提出があった場合には、退職手当等の支払者が源泉徴収事務を行います。

受給者は、退職所得に関する所得税の精算が終了したことになり、他に確定申告をすべき事由がなければ確定申告の必要はありません。

この申告書を提出しない受給者は、退職所得控除や1/2課税の適用がなく、退職手当等の金額に20.42%を乗じた金額が源泉徴収され、受給者本人が確定申告を行い税額を精算することになります。

②源泉徴収

退職手当等の支払者は、その支払の際、所得税を徴収し、その徴収日の属する月の翌月10日までに、その所得税を国に納付する必要があります。(納期の特例の要件を満たす場合はその定められた日までに納付します。)

 

4.所得税の計算方法

具体例

退職金500万円 勤続年数10年1月のケース

①課税標準:{500万円-(40万円×11年)}×1/2=30万円

②所得税:30万円×5%×102.1%=15,315円

③住民税:30万円×10%=3万円

 

5.その年に2以上の退職金を受ける場合

退職により会社からと中退共から退職金を受ける場合があります

この場合、受給者は先に退職金を受ける方を選択し「退職所得の受給に関する申告書」を提出し、支払者は源泉徴収事務を行います。

その後、もう一方の支払者へ、先の退職金の情報を記載した「退職所得の受給に関する申告書」と源泉徴収票を提出し、支払者はその情報を基に源泉徴収事務を行います。

 

具体例(中退共、会社の順に受給する場合)

会社退職金300万円、中退共200万円

勤続年数10年1月

①中退共の計算

課税標準:200万円-(40万円×11年)=0円

所得税:0円

②会社の計算

課税標準:{300万円-(40万円×11年-200万円)}×1/2=30万円

所得税:30万円×5%×102.1%=15,315円

住民税:30万円×10%=3万円

 

おわりに

役員へ退職金を支給する際に、勤続年数が5年以下である場合は1/2課税が適用できないなどの制限が生じますので注意が必要です。(担当:佐藤敬)

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