会計・税務の知識

2018年09月20日 発行返品調整引当金制度及び長期割賦販売等の延払基準の廃止

はじめに

「収益認識に関する会計基準」等の公表に対応して、2018年度税制改正において、「返品調整引当金制度」及び「長期割賦販売等に係る延払基準」が、経過措置を講じたうえ廃止されました。今回は、その税制改正内容について説明します。

 

1.「返品調整引当金制度」とは

出版業等の①対象事業を営む法人で、販売する商品の大部分について②買戻しの特約を結んでいるものが、翌期以降に発生する買戻しによる損失の見込額を引当金として計上し、限度額にいたるまで当期の損金とすることができる制度です。

 

2.「返品調整引当金制度」の適用要件及び繰入限度額

(1)適用要件

下記①②の2要件を満たすもの

①対象事業

a.出版業 b.出版に係る取次業 c.医薬品(医薬部外品を含む)、農業、化粧品、既製服、蓄音機用レコード、磁器音声再生機用レコード又はデジタル式の音声再生機用レコードの製造業 d. cに掲げる物品の卸売業

②買戻しの特約

対象事業に係る棚卸資産の大部分につき、次の特約があること

a.販売先から、その販売した商品を当初の販売価格で無条件に買い戻すこと。

b.販売先は、商品の送付を受けた場合にその注文によるものかどうかを問わずこれを購入すること。

(2)繰入限度額

下記いずれかの方法による計算額

①売掛金基準

期末売掛金額×返品率×利益率

②売上高基準

期末前2か月の総売上高×返品率×利益率

 

3.経過措置

(1)2018年4月1日~2021年3月31日開始事業年度

⇒改正前の規定による処理が認められます。

(2)2021年4月1日~2030年3月31日開始事業年度

⇒繰入限度額が1/10ずつ減少し、10年間で0となります。

 

4.「長期割賦販売等に係る延払基準」とは

販売する商品によっては、商品の引き渡し後に、代金の回収が長期の分割払いになるケースがあります。原則に従えば、代金の回収時期に関わらず、商品を引き渡した時点で全額を収益として計上します。

しかし、原則通り全額を収益として認識してしまった場合、キャッシュインフローを伴わない多額の利益が計上されてしまい、納税資金の確保が困難になる可能性があります。したがって、3回以上に分割して対価を受領することや賦払期間が2年以上である等の要件を満たす場合、入金期日の都度収益を計算する方法を選択することができます。この計算基準を「長期割賦販売等の延払基準」といいます。

 

5.経過措置

2018年4月1日及び2023年3月31日がターニングポイントになります。

2018年4月1日前に延払基準で経理した取引については、2023年3月31日までに開始する各事業年度において従前の処理が認められます。2023年3月31日以前に開始する事業年度までは、任意に延払基準の適用を取りやめることができ、その後は完全に延払基準の適用は不可となります。

延払基準の適用終了時において、繰延べられていた収益及び費用がある場合は、適用終了時の事業年度に一括して算入します。ただし、収益額が費用額を超える場合には、10年間で均等償却することも認められています。

 

おわりに

会計においては、返品調整引当金も長期割賦販売等に係る延払基準も2021年4月以降開始事業年度から廃止が強制適用になります。

税務上は、今回の改正によって事業者によっては突然大幅に税額が増加する可能性があるため、長期的に経過措置がとられています。その場合、会計と税務に差異が生じ別表上の調整が必要になります。経過措置の内容を正しく理解し、余計な不利益を被ることがないよう、注意が必要です。(担当:野村)

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