会計・税務の知識

2019年04月18日 発行いまさら人に聞けない!雇用統計調査

はじめに

2019年1月11日、厚生労働省が毎月勤労統計調査について集計過程に誤りがあったことを公表し、大きな話題となりました。調査対象事業所のうち「500人以上の事業所」について、本来であれば全数調査を行うべきところ、抽出調査によって行っていた、というものです。

 

ところで、今回問題になった毎月勤労統計調査などの統計調査が、私たちの生活のなかでどのようなものに活用されているか、ご存知でしょうか。

 

本稿では、雇用に関する統計調査の利活用について紹介していきます。

 

 

1.雇用・賃金にかかる統計調査

厚生労働省は定期的に雇用・賃金にかかるものだけで20を超える統計調査を行っています。

図:雇用・賃金にかかる統計調査(抜粋)

調査名 頻度 内容
毎月勤労統計調査 毎月 常用労働者を5人以上雇用する事業所の雇用、給与及び労働時間について変動を明らかにする調査で全国調査と地方調査がある
労働経済動向調査 毎年
2.5.8.11月
景気の変動、労働力需給の変化等が、雇用、労働時間等に及ぼしている影響を把握する
雇用動向調査 毎年
6.12月
事業所における入職・離職の状況等を調査し、雇用労働力の産業、規模、職業及び地域間の移動や求人状況等の実態を明らかにする
雇用構造実態調査 不定期 若年者やパートタイム、転職者や求職者などの就業形態の実態や受入状況を把握する
賃金構造基本統計調査 毎年6月 主要産業に雇用される労働者について、その賃金、雇用形態、就業形態の実態を明らかにする
就労条件総合調査 毎年1月 賃金制度、労働時間制度、定年制等の現状を明らかにする
雇用均等基本調査 毎年10月 男女の雇用均等問題(男女の配置・昇進、育児休業等)に係る雇用管理の実態を総合的に把握する

厚生労働省HP  https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/index.htmlを基に筆者が作成

 

 

2.統計調査の方法と利活用

調査はおもに二種類の方法で行われております。一定の規則に従って抽出した調査対象に対して調査票を郵送する方法と、調査員が直接現地に赴いて調査する方法です。調査項目のうち一部の項目については、上記のような抽出調査ではなく、対象事業所のすべてを調査しなければならない全数調査の項目があります。

毎月勤労統計調査は、月ごとの調査のほかに定期的な特別調査を行うことで、就労状況やその賃金、労働時間について地域ごと、世代ごとに統計をまとめ、その変動を公表しています。勤労統計調査の結果は一般的な経済分析のほかに、以下のように利活用されています。

 

 

①失業給付額の算定に用いる賃金日額の改訂

②労働災害時の休業補償額の改訂

③労災保険の休業補償給付基礎日額の改訂

④平均日額の算定

⑤民事事件・事故の補償額の算定  など

 

 

また、不定期に雇用の構造に関する実態の調査を行い、派遣労働者や高齢者、若年者や転職者などの特定の対象について、その就労環境や労働条件、さらには就業にかかる意識について、幅広く調査しています。これらの調査は先に掲げた労働経済動向調査や雇用動向調査、雇用均等調査などと併せて、入職率や離職率、再雇用率などの算定資料として利活用されています。

ほかにも、賃金構造基本統計調査は、民間企業の賃金決定の基礎資料として広く利用されているほか、地方自治体における最低賃金の決定や、労災保険の給付額算定の資料として利活用されています。

 

 

おわりに

みなさんの会社にも民間の調査会社などを介して、統計調査票が送られてきているかと思います。それらの調査内容はここまでに紹介してきたとおり、私たちのもとにさまざまな情報となって還元されています。

調査票が送られてきた際には、ぜひご協力のほど、よろしくお願いします。(担当:岩崎)

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