会計・税務の知識

2019年06月27日 発行家族信託の活用

はじめに
近年日本では高齢化社会が進行しており、内閣府の平成30年(2018年)版高齢社会白書によると、

平成29年(2017年)10月1日時点の総人口1億2,671万人に対し、65歳以上人口は3,515万人とその割合は27.7%となっています。
高齢化に伴う認知症等により本人の意思判断能力が低下した場合、

例え家族であっても本人に代わって財産の管理処分を行うことはできません。

結果、本人の保有する財産の管理処分方法は制限され、円滑な承継が行えなくなる可能性があります。

今回はそのような場合に備えた対策の一つとして「家族信託」の概要について説明します。

 

 

1.家族信託とは
信託とは、「自分の財産を信頼できる相手に移転し、一定の目的に沿って大切な人や自分のために運用・管理・継承してもらう」制度です。

一般的な信託では以下の3者が登場します。

委託者 財産管理を任せる人
受託者 財産を預かって管理・運用・処分する人
受益者 信託財産から生じる各種利益を受ける人

信託は営利を目的とした商事信託と、営利を目的としない民事信託の2つに大別されます。

商事信託は信託業免許を持つ信託銀行等のみが受託者となれるのに対し、

民事信託は受託者の制限はありません。

民事信託の中でも、子をはじめとする家族や親族等が受託者となる信託を一般的に

「家族信託」と呼びます。

 

 

2.信託以外の方法
① 成年後見人制度
高齢者の財産管理を行うための制度として成年後見人制度というものがあります。
成年後見人制度とは、本人の意思判断能力が低下したときに、

本人又は家庭裁判所が選任した成年後見人が法律面や生活面で支援をし、

本人の保護を図るというものです。成年後見人には本人の生活のために身上監護権が付与されますが、財産管理については「本人のために財産を維持管理すること」が主な目的となるため、

財産の組み換えや生前贈与等の相続対策は原則としてできず、信託に比べて財産管理の面では制約があります。

 

② 遺言書の作成
遺言書を作成することで自分の意思により財産の承継先を指定することができますが、

遺言の場合指定できるのは1次相続までで、2次相続以降の承継先を決めることはできません。

 

 

3.家族信託のメリット
委託者の意思判断能力に問題が生じる前に委託者と受託者の間で信託契約を締結します。

家族信託では委託者=受益者とする、いわゆる自益信託の形式にすることが一般的です。

財産管理及び資産承継の面の主なメリットとしては以下が挙げられます。

 

① 認知症等への対策
財産を受託者名義に変更することによって、本人に意思判断能力がなくなった後も、

信託の目的に沿って受託者が財産の管理処分を行うことが可能となります。

例えば、高齢の親が保有している自宅や賃貸不動産、預金などを子に信託することによって、

親の意思判断能力がなくなった後も子が代わりに修繕や売却等の管理処分を行うことができます。

また、親の生活及び介護等に必要な経費を信託財産から充当することもできます。

 

② 2次相続以降の対策(受益者連続型)
信託契約で受益者を指定することにより、2次相続以降の財産の帰属先を指定することができます。1次相続では配偶者に、2次相続では子にといったように数世代に渡り承継先を指定することが可能です。
その他、共有財産対策や遺産分割対策等にも信託を活用することができます。

 

 

4.信託の課税関係
委託者=受益者の場合、実質的な経済価値である受益権の帰属先に変わりはありませんので、

信託財産が受託者名義に変わったとしても信託時点では贈与税や譲渡所得税等は発生しません。

信託契約に基づき受益権が移転した時点で課税関係が生じます。

 

 

おわりに
信託では契約内容次第で柔軟な対応が可能となります。信託以外の方法とも比較をして、

信託を活用する場合には各専門家の協力を得て作り込んでいく必要があります。(担当:長澤)

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