会計・税務の知識

2019年07月25日 発行みなし配当に関する実務上の留意点

はじめに

みなし配当に係る所得税額控除や益金不算入の考え方は、通常の配当と異なる点があり、実務上その判断を誤ると大きな税務上の損害を被ることとなります。今回はみなし配当に関する実務上の留意点を記載いたします。

 

 

1. みなし配当とは

みなし配当は、法人の株主等が次に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合に、その金銭の額及び資産の価額の合計額が、その法人の資本金等の額のうちその交付の基因となったその法人の株式等に対応する部分の金額を超えるときの、その超える部分の金額と定義されます。

 

1.合併(適格合併を除く。)

 

2.分割型分割(適格分割型分割を除く。)

 

3.株式分配(適格株式分配を除く。)

 

4.資本の払戻し(剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの並びに出資等減少分配をいう。)又は解散による残余財産の分配

 

5.自己の株式又は出資の取得(金融商品取引所の開設する市場における購入による取得等を除く。)

 

6.出資の消却(取得した出資について行うものを除く。)、出資の払戻し、社員その他法人の出資者の退社又は脱退による持分の払戻しその他株式又は出資をその発行した法人が取得することなく消滅させること。

 

7.組織変更(組織変更に際して、その組織変更をした法人の株式又は出資以外の資産を交付したものに限る。)

 

 

2.みなし配当に関する所得税額控除

法人から受ける剰余金の配当若しくは利益の配当若しくは剰余金の分配若しくは金銭の分配に対する所得税については、その元本を所有していた期間に対応する部分の金額が所得税額控除の対象となりますが、みなし配当は、条文上「みなし配当を除く」として、所有期間の案分計算対象から除かれているため、所得税の全額が控除対象となります(法令140の2①一、二)。

 

 

3.完全子法人株式等に係るみなし配当の益金不算入

次に、完全子法人株式等に係る配当については、配当等の計算期間を通じて完全支配関係があることが、全額益金不算入を受ける要件となります。一方、みなし配当である受取配当金については、当該みなし配当の金額の支払に係る効力発生日の前日において配当を受ける株主法人と配当した法人との間に完全支配関係があった場合、その配当を受ける法人が有する株式は完全子法人株式等に該当するので(法令22条の2第1項)、原則、完全支配関係のある子法人からうけるみなし配当金は全額益金不算入となります(法法23条1項)。

 

なお、関連法人株式等の判定は、配当等の計算期間中、継続して株式等を1/3超保有していたかにより判定することとなるため、保有期間に留意して益金不算入の判定を行うこととなります。

 

 

4.自己株式として取得されることを予定して取得した株式に係るみなし配当

最後に、法人が、株式等の発行法人による自己株式の取得をすることが予定されている株式等を取得した場合において、その株式等が発行法人により予定通り取得されたときは、その株式等に係るみなし配当については受取配当等の益金不算入の規定は適用されません(※)。なお、この場合における「予定」とは、たとえば公開買付けに関する公告がされている場合や組織再編成が公表されている場合をいい、「取得」には適格合併又は適格分割型分割による引継ぎを含むこととされています(法法23③、23の2②)。

 

これは、旧制度において、法人株主が株式を市場で購入した後に同株式を発行法人に売却した際、みなし配当の益金不算入制度と同時に譲渡損失が生じた場合にはその損失を計上することができる仕組みとなっており、実務上ではこの制度を利用して恣意的に譲渡損失等を計上させるケースがあったため、これを規制するために平成22年度の税制改正で設けられた制度です。

※完全支配関係がある発行法人による自己株式の取得に係るみなし配当については、この制限はなく、受取配当等の益金不算入の適用があります。

 

 

おわりに

みなし配当が発生するケースは金額が大きいケースが多く、税務処理を誤った場合のリスクも相当程度高くなることが多いです。税務上の判断に際しては、事前に専門家に相談し慎重に検討しておく必要があります。(担当:高橋)

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