会計・税務の知識

2019年09月12日 発行通勤手当と所得税と消費税

はじめに

一般的に、通勤費は所得税が課税されない。という認識が多いと思いますが、

実は所得税が課せられる場合があります。

 

 

1. 通勤費の非課税限度額とは

遠方から通勤している方、新幹線またはグリーン車で通勤される方は通勤費が多額になる事があります。

この場合、非課税限度額(交通機関又は有料道路を利用時150,000円/月)を超えると給与として認識されます。

 

 

但し、非課税の範囲は「経済的かつ合理的な運賃等」である必要がありますので、

実際の通勤経路や最短(最安値)ルートである事が必要です。

新幹線は、通勤時間や駅の存在する場所を考慮し、利用に合理性があれば非課税の範囲に入りますが、

グリーン車料金は経済的合理性がないと判断され給与課税されます。

 

 

2.自動車や自転車、バイクによる通勤の限度額

自動車通勤の場合は、ガソリン代や高速代が発生する可能性があります。

これもまた所得税法上の非課税限度額を超えている場合は給与とします

そして、片道の通勤距離によって非課税最高限度額が決められていますので、

定額で支給している場合には注意が必要になります。以下が片道距離による限度額表です。

【距離に応じた非課税限度額】

片道55 Km以上 31,600円
片道45 Km以上55 Km未満 28,000円
片道35 Km以上45 Km未満 24,400円
片道25 Km以上35 Km未満 18,700円
片道15 Km以上25 Km未満 12,900円
片道10 Km以上15 Km未満 7,100円
片道 2 Km以上10 Km未満 4,200円
片道2 Km未満 全額課税

 

 

3.消費税の取り扱い
消費税法においては、給与であれば消費税が課されない不課税取引に該当し、

国内の交通機関や有料道路の利用代等は課税取引に該当します。

所得税法上の非課税限度額を超えて支払った場合は、給与になりますが、消費税法上、

所得税法を考慮して不課税で計上するのでしょうか?
給与所得として考えれば、全額が不課税と思うかもしれません。

ところが、先に記載した給与所得で課税される限度額超過分であっても、

「通常必要とされる範囲」の交通費であれば、消費税法上は課税取引として認識します。
つまり、限度額を超える金額に対しては、この「通常必要とされる範囲」を検証する必要があり、

必要と判断すれば課税取引として処理する事になります。
実務上は、各会社の運用次第ですが、給与科目の中に消費税課税取引と

消費税不課税取引とが混在する事になる可能性があるので、ややこしいですね。

 

 

4.給与に含まれた通勤費
まれに、通勤費込みで給与やアルバイト代を支払う会社が存在しますが、

会社側としては給与やアルバイト代に含めている以上、消費税不課税取引として認識します。

確定申告する個人は、この限度額に照らし合わせて通勤費を経費とできるのでしょうか?

平成13年に国税不服審判が出した裁決では、確定申告から所得から控除する事は出来ないとされました。

給与と通勤費を別に受領している場合と、課税される所得金額に差が生じます。
なお、時給などに交通費が含まれると、時給1,000円×8時間のアルバイト、

往復の電車代1,000円の場合、実質の時給が875円となり、

東京都の最低賃金を下回る事になります。(東京都最低賃金985円 10月1日以降1,013円)

 

 

おわりに
実務上は、給与科目に課税取引が混ざったり、超過額の管理を行ったり、限度額を把握しておいたりと、煩雑になるので、

業務の簡素化の為にも通勤費申請の最初の段階で確認しておきたい事項ですね。(担当:池田)
出典:国税HP,国税不服審判所HP

 

 

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