会計・税務の知識

2020年02月20日 発行(税制改正特集)国外財産調書制度の見直し

はじめに

2020年度(令和2年度)税制改正大綱において、納税環境整備が盛り込まれました。

その中で「国外財産調書制度等の見直し」についてその内容を概説します。

 

 

1.国外財産調書制度の概要

国外財産調書制度は2012年度(平成24年度)税制改正により、

国外財産を保有する居住者から保有する国外財産

(その年の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える)に係る

調書の提出を求める制度であり、2014年1月から施行されています。

 

国外財産調書は自己申告に基づくものであり、適切な提出を担保するため、

国外財産を開示していたものについて、所得税や相続税の申告漏れ等があった場合のペナルティが

軽減(過少申告加算税等が5%減額=軽減措置)される一方、

開示していないものについてペナルティを加重(5%加算=加重措置)する規定が設けられています。

ただ、現行の制度では相続税に関して加重措置の適用はありませんでした。

 

 

2.相続国外財産に係る相続直後の国外財産調書等への記載の柔軟化

相続の開始の日の属する年の12月31日(相続直後)においてその有する国外財産に係る国外財産調書については、

その相続等により取得した国外財産(「相続国外財産」)を記載しないで提出することができる。

この場合、国外財産調書の提出義務の判定からも相続国外財産の価額を除外する。

 

3.国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の見直し

① 国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の適用対象に、

相続国外財産に対する相続税に関し修正申告等があった場合を加える。

所得税 相続税
優遇措置
加重措置 ×→○

○:適用あり  ×:適用なし

 

② 次のいずれかに該当する場合には加重措置は適用しない。

イ 相続国外財産を有する者の責めに帰すべき事由がなく提出期限内に国外財産調書の提出がない場合

 

ロ 相続国外財産を有する者の責めに帰すべき事由がなく国外財産調書に記載すべき

相続国外財産についての記載がない場合(記載不備の場合を含む。)

 

 

4.過少申告加算税等の特例の適用の判定の基礎となる国外財産調書等の見直し

相続国外財産に対する相続税に関し修正申告等があった場合の過少申告加算税等の特例の

適用の判定の基礎となる国外財産調書について、次に掲げる措置の区分に応じそれぞれ次に定める

国外財産調書とする。

 

・軽減措置:下記のいずれかに記載がある

・加重措置:下記のすべてに記載がない

 

イ 被相続人の相続開始年の前年分の国外財産調書等

ロ 相続人の相続開始年の年分の国外財産調書等

ハ 相続人の相続開始年の翌年分の国外財産調書等

 

 

5.国外財産調書に記載すべき国外財産に関する書類の提示または提出がない場合の

加算税の軽減措置及び加重措置の特例の創設

国外財産を有する者が国税庁等の職員から国外財産調書に記載すべき国外財産の取得等に係る書類のうち、

通常保存等をすることができるものの提示を求められた場合に、その提示を求められた日から

60日を超えない範囲内において職員が指定する日までに提示をしなかったときにおける

軽減措置及び加重措置の適用については、次のとおりとする。

 

・軽減措置:適用しない

・加重措置:加算する割合を10%(適用前5%)

 

 

6.適用時期

2については2020年分以後の国外財産調書等に、3~5については2020年分以後の所得税又は2020年4月1日以後に相続等により取得する財産に係る相続税について適用する。(担当:齋藤)

 

出典:総務省HP 令和2年税制改正の大綱 閣議決定より

 

 

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