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2021年12月22日 / 投稿者:Takeuchi 心の耐久力・レジリエンスとは何かー世界宗教と日本人の心の基軸

多摩大学「現代世界解析講座ⅩⅣ」の9回目(12月2日)は、寺島学長による「心の耐久力・レジリエンスとは何か-世界宗教と日本人の心の基軸」でした。

 

1.戦後日本人の精神の構造・・・・「宗教無き時代」の意味

 

戦後の日本は「宗教無き時代」と言えます。次の3点から説明できます。

 

(1)過剰に政治化された宗教の時代への反動

幕末の志士は、天皇親政(尊王)の神道国家を造るために幕府を倒して明治維新を成し遂げました。しかしながら、程なくして、欧米列強に伍していくためには近代国家に脱皮する必要があると気づき、憲法制定や内閣制度への移行等に取り組みます。

この時代、要は、根底に「神国日本」の意識を持ちながら、表面は近代国家という二重構造になっていたわけです。

この二重構造が、軍部の「自分達は天皇と直結しており内閣や憲法は関係ない」という独走を生み、戦争へと突き進んでしまうことになります。

そして、敗戦によって国家神道は崩壊し、宗教の空白が生じることになりました。

 

(2)経済至上主義の時代

戦争はアメリカの”物量”に負けたのだから物量で復興を遂げるんだと言わんばかりに、日本はとにかく経済復興・成長に邁進しました。

松下幸之助のPHP(Peace and Happiness through Prosperity)~繁栄による平和と幸福~はその象徴です。

 

(3)社会主義革命という幻想

団塊の世代(寺島学長もその一人)が大学生の頃は、その半数以上が社会主義者だったといっても過言ではありませんが、そうなると”宗教”より”階級矛盾の克服”が命題でした。

 

2.3.11の衝撃とコロナ・ショック

 

戦後、宗教的熱意が薄い中、経済至上主義で生きてきた結果、日本は1994年には世界のGDPの18%を占めるまでに成長しました。ところが、IMFによれば2021年にはこれが5.8%まで縮小するとの予測がなされるほどに世界における日本の地位低下が著しくなっています。

こうした中、「3.11の衝撃」と今回の「コロナ・ショック」によって、心に宗教性がない日本人は「では経済以外に何に頼ればいいのか」というレジリエンス(心の回復力、耐久力)が問われることになります。

 

一方で、日本人は、宗教性は希薄でも、潜在的には「神仏儒」の「魂の基軸」を宿しており、自分を超えた大きな力(摂理、条理)の気配を感じる力を持っています。必ずしも下を向く必要はありません。

・神道:神社神道の根強さ(故郷の自然と一体)

・仏教:日本仏教の創造性(人間の意識の深さと壮大な宇宙観)

・儒教:論語の語る道義(武士道の徳目)

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