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2010年05月17日 / 投稿者:Staffblog 自転車レースとアシスト

私はミステリー小説が好きで、目に付いた文庫本を気まぐれに買っては読むのですが、
最近読んだ 『サクリファイス』 (近藤史恵著・新潮文庫) という小説はなかなかのヒットでした。
自転車レースを題材にしたミステリーで、ミステリーとしても十分に面白かったのですが、
何より興味深かったのは、自転車レースという競技そのものに関する話でした。

自転車レースと言えば、ツール・ド・フランスというメジャーな大会があることや、
アームストロングがその大会で7連覇を達成したことくらいは知っていましたが、
それ以上の知識は特になく、また興味もありませんでした。
単に自転車の速い人が優勝する、その程度のものだと思っていましたので。

しかし、 『サクリファイス』 を読み、自転車レースが実は団体競技であることを知りました。
「えっ?」と思いました。アームストロングが7連覇を達成した、という表現からも分かるように、
優勝は個人の獲得ポイントで決まるはず。どこが団体競技なのだろう…と疑問に思いましたが、
小説を読み進めていくうちに、「なるほど!」と思いました。

チームには、優勝を争うエースの他に、「アシスト」と呼ばれる選手達がいるそうです。
アシストの役割には、次のようなものがあります。

●チームで隊列を組んで走行してエースの空気抵抗を減らし、体力を温存させる
⇒自転車レースでは、空気抵抗の有無は勝敗を分ける重要な要素であり、
隊列を組んで走行すれば、単独で走行するよりもエースは遥かに楽に走行できる。

●逃げ集団に加わって、エースがいる後続集団の体力を温存させる
⇒集団では選手達は交互に先頭をつとめなければならず、その際に空気抵抗を受けるが、
逃げを送り込んだチームの他の選手達は、後続集団において先頭を交代しなくてよい
=エースは体力を温存できる。なので、自滅と分かっていながらアシストは逃げる。

●エースのタイヤがパンクしたら、自分のタイヤと交換する
⇒チームカーがタイヤを補給してくれるまで、アシストは立ち尽くすしかないが、
エースの順位の方が大事なので、自分は踏み台になる。

このように、アシストは 『サクリファイス』 という題名通り、エースのために『犠牲』となる選手、
そう言えるかもしれません。アシストという新たな視点を手に入れた今、
がぜん自転車競技に興味がわいてきました。今度テレビでやっていたらぜひ見てみたいです。

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